第58話 対馬での学び その3

(本号はピデさんこと小林秀輝さん執筆の記事です)


このたび、対馬視察で北村さんと納谷さんにご一緒させていただいた小林です。学生のときに何度も通った長崎県対馬。今回は地域ファシリテーションについて学べたのはもちろん、当時お世話になった方々と再会することができ、充実した滞在となりました。


対馬市上県町志多留(かみあがたまちしたる)。この集落には、伝統的な構法が用いられたホンヤ(主屋)やコヤ、土地の使い方など、対馬西岸の在来集落の古い姿を垣間見ることのできる素敵なところです。ここに、一般社団法人対馬里山繋営塾(けいえいじゅく)の事務所があります。古民家を再生させた素敵な事務所です。今回は代表理事の川口幹子さんを訪ね、取り組まれている事業の理念や内容についてお話を伺うことができました。


対馬里山繋営塾では、観光事業と教育事業を二つの柱に事業を行っているということでした。この二つの事業は車の両輪のように補完の関係にあるように感じられました。対馬里山繋営塾では対馬グリーン・ブルーツーリズム協会の事務局も運営していて、その中で民泊事業や各種ツアーを企画しているとのこと。以前私も対馬グリーン・ブルーツーリズム協会が紹介している民泊を利用させていただいたことがありますが、民泊先ではおいしい食事をいただき生業についてのお話しをたくさんお聞きすることができ、濃密で充実した忘れられない思い出となっています。この民泊をひとつの軸に、各種体験プログラムやパッケージプラン、さらに環境教育プログラムや修学旅行、その他研修等を企画されているわけです。

ここでの観光事業は地域を学ぶことであり、それはとりもなおさず教育でもあります。


こうした一連の活動をお伺いして感じたのが、これこそまさに地域資源のインタープリテーションだということでした。川口さんの「参加者の行動変容を期待するツアー造成」といった言葉には、対馬の素晴らしい地域資源を活かして、持続可能な環境や生活の価値を伝えていくという一貫した理念と使命感を感じることができました。対馬里山繋営塾、そして対馬グリーン・ブルーツーリズム協会の企画するツアーを通して、たくさんの参加者が持続可能な社会づくりへ意識が向かうようになるのではないでしょうか。私もぜひ参加してみたいと思いました。


志多留は、これまで対馬市の域学連携事業の主要な舞台としてたくさんの学生が過ごした場所です。川口さんは上述した各種ツアーやプログラムを通した対馬里山繋営塾のミッションを述べる中で、志多留への熱い思いもお話しくださいました。足元の地域への思いと実践があってこその対馬里山繋営塾というゆるぎない思い。事務所の所在する地域である志多留に一住民として関わってきたことが、川口さんの事業が真にグローカル(Think Globally, Act Locally)であることを支えているのだと感じました。


対馬里山繋営塾の取り組みはとても先進的で、お話しを聞いていてワクワクしました。それぞれの地域で生きる我々にとって、たくさんの学びをいただいた訪問となりました。ぜひ今後も対馬里山繋営塾の取り組みから学び続けたいですし、それを能登の地でも牛歩の歩みでも実践していけたらと思いました。



写真:左から川口さん、インターンの石島さん、教育事業部の藤川さん。

志多留にある対馬里山繋営塾の拠点にて。


地域づくりファシリテーション研究所

地域づくりの活動それぞれにリーダーが必要。でも、リーダーだけいればうまくいくとは限らない。側面支援も大切。この側面支援を「地域づくりファシリテーション」と称して、その役割を考えていきたい。研究所と名乗っているが、とりあえず仲間たちと共にこじんまりと議論し、実践していくなかでの気付きを記録していく。

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