第61話 対馬での学び その6

(本号はピデさんこと小林秀輝さん執筆の記事です)


対馬市上県町佐須奈に事務所とショップをおく一般社団法人MITの代表理事である吉野元さんを訪ねました。対馬の域学連携事業に参加した立場からすると、MITさんは域学連携事業のコーディネートで活躍してきた組織というイメージですが、現在、持続可能な開発のための教育(ESD)や森づくり、地域資源を活かした商品開発のサポート等、様々な分野で地域を元気にする仕事をされています。広い分野に対応できる地域密着のコンサルタント組織という感じでしょうか。


お話を伺っていると、コンサルタント業務に際しては黒子に徹しているという印象を受けました。鋭い問題意識と的確な助言、そして縁の下の力持ち的な素早い実践。吉野さんのすごさは、問題を的確に把握し、取り組むべき課題や解決までのロードマップを描くことだと感じました。そして地域から信頼されていることが伝わってきました。


対馬は地域資源の豊富な地域ですが、仕事は決して多くはない。そうした中でコンサルタント組織として仕事を見つけることに腐心してきたことが伺われました。経営者として地域の中で組織を経営していくことの現実的な難しさについてもお話しくださいました。対馬里山繋営塾と同様、研究分野の出身者として地域課題に取り組むことの魅力と難しさをお話しいただいたことで、むしろ川口さんや吉野さんの存在がどれほど貴重なのかわかりました。


もう一点、吉野さんがいみじくも「MITはインキュベーション組織でもある」とおっしゃったように、島内外の人材を発掘・育成し事業の創出を支援する役割を果たしていることも一般社団法人MITの特徴と言えます。現在対馬で組織を立ち上げてそれぞれの強みを活かした事業を進めて活躍している少なくない方々が、MITで働いた経験をもっています。地域に入る最初の受け皿として機能し、地域課題解決という仕事のノウハウを伝授する。そういう意味では、MITは人材育成組織でもあるわけです。


地域課題の発掘から問題の全体像の描写、解決へのサポート、さらに人材育成に至るまで本当に多様な仕事をされているMITさんですが、それらに一貫しているのは吉野さんが言及される「触媒役(カタリスト)」という自負だと思います。まさに縁の下の力持ちとして、対馬の未来が共創される中で、大きな役割を果たす組織なのだろうと思いました。


ちなみにMITさんの事務所に併設されている「サステナブルショップMIT」には、デザイナーである吉野さんの奥様がデザインされた商品のほか、地域の職人による作品がたくさん販売されています。ぜひ対馬に渡航した際にはショップを訪ねてみるのをおすすめします。



写真:吉野夫妻(由起子さんと元さん)


地域づくりファシリテーション研究所

地域づくりの活動それぞれにリーダーが必要。でも、リーダーだけいればうまくいくとは限らない。側面支援も大切。この側面支援を「地域づくりファシリテーション」と称して、その役割を考えていきたい。研究所と名乗っているが、とりあえず仲間たちと共にこじんまりと議論し、実践していくなかでの気付きを記録していく。

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