第68話 対馬での学び その13
「つながり大国」である対馬での学びを雑記帳のように書き連ねてきました。
今回は、僕らの活動の原点である奥能登地域との関連を考えてみたいと思います。
対馬と能登では共通点が多くあります。
そして、比較することでお互いのよいところを採り入れることも可能です。
社会人向けの地域人材育成講座では、能登のマイスタープログラムが先行しました。
ただ、ゼミ方式や、卒業生のティーチング・アシスタントとしての起用など、対馬から能登が学べることもありそうです。
対馬学フォーラムと対馬グローカル大学の発表会。
これを年1回、同じ日に同じ会場で開催すること。
ここに、「つながりの設え」としての対馬のスケールの大きさがあります。
能登でも、マイスタープログラムの卒業研究の発表会が毎年開催されています。
また、プログラムの一環として、能登の里山里海学会という行事が開催されています。
他にも様々な活動があります。
金沢大学能登学舎が所在する小泊(こどまり)集落の人たちの「春まつり」。
あるいは、マイスタープログラム修了者たちによる「マイスターズ・マーケット」。
学際的な研究ネットワークである能登総合研究会(第53-55話参照)。
能登里海教育研究所という奥能登の団体がおこなう活動もあります。
これらの活動や集会が、段階的でもよいので、横につながっていくと理想的です。
もちろん、大きな労力が必要となるので簡単ではありませんが。
対馬で得た教訓が奥能登で活用されるよう、僕らも微力ながら考え続けたいと思います。
最後に、今回、奥能登から3名のチームで訪問したことの振り返りをしたいと思います。
地域づくりファシリテーターとしての人材の可視化。
その一つの手段として、紹介カードのような構想を以前から持っていました。
名刺のように所属・役職・連絡先の情報だけでなく、かといって履歴書でもなく。
ファシリテーター的なスキルや「人となり」が見やすく伝わる媒体。
この発信の設え自体もファシリテーションです。
今回の対馬訪問にあたり、haruデザインさんが我ら3名のカードを試作してくれました。
二つ折りにして名刺サイズ。
一見名刺のようですが、開くと中にはスキルや「人となり」の情報が載っています。
現地でご挨拶したり名刺交換する際に、このカードが重宝しました。
実際の効果や課題はまだ検証しきれていません。
我々3名の間での振り返りでは、「初対面のときに会話の糸口となる」というメリットがharuデザインさん自身から出ました。
なるほど、確かにそれは大切なことです。
いずれ、奥能登で(そして他の地域で)地域づくりファシリテーターの人材の輪が広がり、束となって存在感を示していく際には、こうしたカードが紙とウェブ版の両方であると素敵だと考えています。
今回、まずは最初の試行をできたことは大きな一歩と感じています。
そして、チームで訪問できたことの意義を、メンバーへの感謝とともに述べたいと思います。
haruデザインさんは、初めて会う対馬の人たちとの距離をすぐに縮めてくれました。
奥能登で生まれ育ち、いまも里山里海の暮らしを実践。
なので、対馬の人たちと食材の話など盛り上がりました。
「あなた輝いているね」と対馬住民のおかあさんから言われていました。
コミュニケーション能力の高さが財産ということも見せてくれました。
ピデさんは、ご自身の対馬での経験や人脈を大いに活かしてくれました。
対馬の取り組みを外部から見るとき、発信力の高い活発な移住者が注目されがちです。
もちろんそれに値する活動を実践している人たちなので当然のことです。
でも、やはり地元で生まれ育った人たちの考えや暮らしぶりも大切。
両方を知ることで、初めて現地での学びが立体的になる気がします。
今回、ピデさんのおかげで、限られた期間とはいえ、立体的な学びとなりました。
何より印象的だったのは、以前にお世話になった対馬の人たちとの関係性。
数年ぶりの突然の再訪にもかかわらず、みなさんしっかり覚えていました。
そして、ピデさんのことを懐かしく思い出していました。
地域の人たちから信頼される研究者だったことがよく分かります。
そして、ピデさんが考える研究者の役割を今回聞くことができ、僕にはとても刺激的でした。
在野の研究者という存在の価値を語る小林さんが印象に残っています。
この3名のチームだからこそ学べたことが多くあります。
それも含めて、つながりの設えを強く意識できる機会となりました。
お世話になった皆様に心から感謝申し上げます。
なお、今回の対馬訪問にあたっては、公益財団法人トヨタ財団および公益財団法人科学技術融合振興財団の支援をいただきました。
重ねて感謝申し上げます。
写真:帰りの空港での待ち時間に作業する奥能登チーム
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