第35話 「ミステリー」という名の探求 その2

前号のとおり、まずは個人で図を作りました。

僕の図は次のようになりました。



僕の図を載せたのは、あくまでイメージが湧くようにという目的です。

「よい例」という意味ではまったくありません。


グループ内でお互いに見せ合ってみます。

中には似た部分がある人同士もいます。

でも、基本的に人それぞれであることが分かります。 


グループとして1つの図を作ることになっているので、

まず基本にする図を1つを選ぶことにしました。


選ばれた図は(僕の図ではありません)分類のしかたに特徴がありました。

この分類の工夫を掘り下げたいというメンバーの気持ちが見えました。


議論は進みましたが、結果的に選ばれた図を改変せず、元のまま使うことになりました。

グループ内で何を議論していたかというと、この図から受ける気づきの共有でした。

この間、高橋さんはずっと我々の議論を見守っていました。


グループ作業の時間が終了しました。

本来はここで各グループの結果を全体に共有する段階です。

今回は1グループのみなので省略です。


ここで高橋さんから、手法の背景情報について説明していただきました。

まず、ミステリーという名称は「謎解き」のニュアンスだそうです。

そして重要なのが「正解はない」ということです。

なので、整理のしかたは人の数だけ多様ということになります。


このような手法で学ぶのに適したのが、「厄介な問題」だそうです。

原因と結果の関係が単純でない複雑な問題です。

複雑だから、現象を理解するには全体像をシステムとして考える必要があります。

解決策を見つけるのも簡単ではありません。

気候変動はまさに厄介な問題です。


今回、地域づくりファシリテーター研究会を中心とした有志が参加しました。

僕以外の3名はそれぞれ次の立場の人たちです。


探究学習に力を入れている地元の高校教員。

地元の小中学校でのSDGs学習のコーディネーター。

科学コミュニケーションの専門性を持つ自治体職員。


今後、気候変動に関する主体的な学びの場づくりの担い手になりそうな人たちです。


実は、僕が能登に来た2017年当初から感じていたことがあります。

それは、気候変動学習について地域で耳にすることの少なさでした。


「里山里海」という切り口での学習は既に充実しています。

特にここ数年は、急増していたイノシシによる農業被害などが日常的に話題に出ていました。

海岸に押し寄せるゴミ(特にプラスティック)についても然りです。

これらは、「いま目の前に見える」問題です。


一方、見えにくい気候変動は能登ではまだあまり掘り下げられていない印象を受けました。

社会人向けの人材育成講座でも気候変動が正面から取り上げられることはほぼ皆無でした。

ということは、能登ではこれから「伸びしろ」が大きい。

そう僕は考えていました。


では、世代を問わず能登において気候変動の主体的な学びは広まるだろうか?

どんなきっかけや仕掛けがあればよいのだろう?

そんな問題意識が自分のなかにずっとありました。


なので、高橋さんからミステリーのことを以前に教えてもらったとき、

「もしかしたら、これかもしれない!」と感じました。


実際に能登の学びの場で活用されるかどうか、まだ分かりません。

小さなきっかけがあれば大きく展開するかもしれません。

今回設けた体験の機会もその一つになれば幸いです。

導入を希望する学校や講座などあれば協力したいと思います。


その際に大切なことが一つあります。

それは「教師は正解を教える人」という固定観念からの解放です。


気候変動の理解には科学的な知見が必要。

生徒は疑問を教師に投げてくることが多々あるでしょう。

そんなとき、教師が正解を与える必要はありません。

そもそも完全に正しい答えなど、ここでは存在しないのですから。

複雑性と不確実性をうまく表現しながら、さらなる生徒の探究を促す応じ方。

答える、というより「問いを返す」のでしょうか。


このように、教師の振る舞いについて考え方を自由にできるかどうか?

それが学習効果に大きく影響しそうです。

こうしたことも含め、すべての立場の人にとっての学び。

それを生む手法の一つがミステリー。


手法について高橋さんから教えていただいたこと。

そして、僕なりの探究の道筋。

それを備忘録としてここに書き出してみました。


この謎解きには正解も完結もありません。

だから、これからも探究は続きます。


地域づくりファシリテーション研究所

地域づくりの活動それぞれにリーダーが必要。でも、リーダーだけいればうまくいくとは限らない。側面支援も大切。この側面支援を「地域づくりファシリテーション」と称して、その役割を考えていきたい。研究所と名乗っているが、とりあえず仲間たちと共にこじんまりと議論し、実践していくなかでの気付きを記録していく。

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