第39話 研究を通じたファシリテーション その4

カードゲームとワークシートを組み合わせたSDGsの学び。

石川県で実践を重ねて分かったこと。

それは、日頃の活動との結びつきの重要性です。


例えば、中学・高校における総合的な学習の時間。

そのなかで里山里海など地域の特性や課題を学んでいる場合。

生徒の多くは、陸や海の生態系保全の視点でSDGsを自分ごと化しました。


あるいは、持続可能性への意識を持ちながら事業を実施している社会人。

このような人たちは、自分の事業がSDGsでどう表現されるかを考えました。

それがSDGsを自分ごととして捉えることにつながったようです。


このように、既に取り組んでいる学習や活動の内容と有機的に組み合わさること。

それが、一見壮大で抽象的なSDGsを、具体的な課題として理解することになります。

当然、単発かつ短時間の学びだけで劇的な変化を生み出すことは困難です。

ゲームとワークシートは気付きの「きっかけ」として有効です。

しかし、すべては日頃からの蓄積があってのことです。

特に、学校現場で工夫しながら授業を設計・運営している先生方。

こうした人たちの努力あっての深い学びであることがはっきりしました。


SDGsで示されるような持続可能な世界を作ること。

そのためには、国や地域などあらゆる規模での変容が必要とされています。

しかし、いかなる規模の変容も、その根底をなすのは構成員である各個人です。

個人の意識や行動が変わるには、単に漠然とした知識だけでは足りません。

いかに自分の関心や価値観と結び付けられるか。

そのための学びの過程が必要です。

本プログラムのような「自分ごと化」支援の意義もそこにあります。


この実践研究は、当時能登に身を置いていた研究者2名が力を合わせて設計・分析しました。

両名とも現在は所属が変わり石川県外に移転しました。

しかし、この研究で示された知見は、別の学習プログラムにも応用可能です。

状況に応じて創意工夫を凝らした学習プログラム。

それらがこれからも石川県や他の地域で生まれること。

そう願っています。


なお、このシリーズ記事は、下記の英語論文の内容を元にしています。


Kitamura, Kenji, and Ito, Koji. 2022. Facilitating Personal Transformation for Sustainability: A Learning Program on the Sustainable Development Goals, Combining a Card Game and a Self-Reflective Questionnaire. Frontiers in Sustainability. 3:842869. https://doi.org/10.3389/frsus.2022.842869


謝辞

本プログラム実施にあたり、各主催組織・学校の担当者や教員の皆様、参加・協力・助言してくださった皆様に深く感謝申し上げます。

カードゲーム「2030 SDGs」を開発した一般社団法人イマココラボ、ご支援いただいた公益財団法人トヨタ財団、公益財団法人科学技術融合振興財団、JSPS科研費(21K12348)にも感謝いたします。  


地域づくりファシリテーション研究所

地域づくりの活動それぞれにリーダーが必要。でも、リーダーだけいればうまくいくとは限らない。側面支援も大切。この側面支援を「地域づくりファシリテーション」と称して、その役割を考えていきたい。研究所と名乗っているが、とりあえず仲間たちと共にこじんまりと議論し、実践していくなかでの気付きを記録していく。

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