第40話 研究を地域とつなぐ その1

前号まで、研究者が担う地域づくりファシリテーションについて考えました。

今回は、それと近いけど少し違う役割についてのお話です。


奥能登には、(支所的なものを除いて)大学がありません。

そのことは、高校卒業後の若者が都市部に流出する大きな理由のひとつです。


一方で、多くの大学生や教員(研究者)が奥能登を訪れます。

自然や文化など幅広い視点で奥能登には魅力がたくさんあるからです。

彼らは、フィールドワークをして、学びを持ち帰ります。

地域にとって、外からこのように人が来るのはありがたいことです。

しかし、フィールドワークを受け入れることは大変でもあります。


せっかくの縁と労力のおかげで生み出された研究成果。

訪問者側が学びを得るだけでなく、成果は地域にも還元されるべきです。

個別に還元されることはもちろんあるのでしょう。

これは、訪問者側が地域の協力者へのお礼としておこなわれます。


ただ、一元的に成果情報が集まっているわけではありません。

なので、地域住民が成果を自由に見つけて活用することはできません。


このように、成果の一元化が地域にないこと。

それは、とてももったいないと感じていました。


一元化の仕組みができれば、地域にとって有益なはずです。

奥能登の小中学校や高校で地元について学ぶとき。

あるいは地域で活動する団体が、既存の研究成果を活用したいとき。

そんなとき、「ここを見れば必要な研究成果を見つけられる」という仕組み。

そのようなものを作れないか、という問題意識です。


役立つのは、地域内だけではありません。

地域外の学生や研究者が、能登において、あるいは能登に関しておこなう研究。

それを新たに始めようとするときに、まず既存の研究成果を把握できること。

こうした仕組みがあることで、奥能登に元々ある魅力に加えて、

研究対象としてさらに奥能登の魅力が高まるのではないでしょうか。


そこで、2021年度、私が所属していた能登SDGsラボの活動として構想しました。

そして、運営委員会構成員からの提案型実践プログラムの一環として実施しました。


プログラムの題名は次のとおり。

「地域と大学の協働型研究の成果体系化に向けた予備研究」


地域内外の人たちの参加を得てこじんまりした研究会を立ち上げました。

そして、6回のオンライン会合を含む議論と学び合いを重ねました。


研究会が年度末にまとめた報告書は、能登SDGsラボのウェブサイトから公開されています。

ご関心のあるかたはご覧ください。

https://noto-sdgs.jp/19wp/wp-content/uploads/2022/03/cuc_report_final.pdf


この研究会活動を通じて感じたことを、次号でお話したいと思います。

地域づくりファシリテーション研究所

地域づくりの活動それぞれにリーダーが必要。でも、リーダーだけいればうまくいくとは限らない。側面支援も大切。この側面支援を「地域づくりファシリテーション」と称して、その役割を考えていきたい。研究所と名乗っているが、とりあえず仲間たちと共にこじんまりと議論し、実践していくなかでの気付きを記録していく。

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