第47話 佐渡での学び その5

前号に続き、雨宮隆三さんから聞いたお話の要点を報告します。


お話を聞いた場所は、「京町茶屋」という古民家でした。

同名のカフェが廃業となり、この建物を地域イベントの会場として活用しています。

それを任せられているのが相川車座という組織です。


海に面した部屋の中心に大きな円卓。

おーっ、まさに車座じゃないですか!(偶然とのことですが)


相川車座という組織

・当初、「車座の会」という会議名として集まった。タウンミーティングや説明会という感じでなく。誰かが「車座がよいのでは?」と発案。「いいね!」となり決まった。

・車座の会で自分から心がけたい4項目を「避けたいこと」の表現で示した。「行政含め地域の人が勝手に計画を進めない」、「地域だけで進まない」、「バラバラに実施しない」、「調整に追われ(すぎ)ない」。

・車座はそのまま組織名にもなった。まず、まちづくり開発会社として株式会社相川車座。基本的にハード面。空き家開発を含むエリアマネジメントを担当する特別目的会社(SPC)。家屋を改修してサブリース。現在の計画では計6棟で分散型。大掛かりな資金調達が必要なため、株式会社という形態を選択した。佐渡市世界遺産推進課が管轄する2棟も含まれる。民間で実施することで工期の短縮や民間資本により活用に生かされることの利点もあり。

・もう一つは一般社団法人相川車座。ソフト面。素通りでなく2時間半くらい滞在してもらうためのコースを作るサービスの開発。100年後の子孫に受け継ぐ目的。現在約4000人の相川を5~10万人にしたい(金山で栄えた時代の相川の人口は5万)。まずはファンとしての関係人口を増やす。ゆくゆくは生業や雇用により定住人口も増やしたい。

・一般社団法人相川車座のほうでは、ソフト開発のため観光庁の助成を受け、「相川まちごとミュージアム」事業を実施中。マップづくりにより、地域内の情報をまとめて発信しようと活動中。コンテンツとしてOkesa Bar Bunzo(岩崎氏が経営する飲食店)でのおけさ体験や町歩きなどを整備中。

・行政から施設の指定管理を受ける際にも一般社団法人という組織が適している(北沢テラスでのカフェもその一例)。

・一般社団法人相川車座の代表(岩崎氏)、理事兼事務局長(雨宮氏)および5分団代表の計7名のメンバーは現在無報酬。まちごとミュージアムでのソフト部分が生業そのものとなったり、コンシェルジュの役割が収入になったりする仕組みなど、どう収益につなげていけるかが来年にかけての課題。


プロセスの設え

・「相川まちごとミュージアム」事業でワークショップをやっているが、上位概念の設定が難しいと感じている。アイデアは「木」を語るようなもので、既に行政など他でもやっている。

・そこでやり方を変えた。個別の具体的なアイデアを出してもらい、「木の枝を集めて雑木林を作る」方法にしている。直島、瀬戸内芸術祭、お台場などゼロから作る場合には上位概念が先で、それに基づいて具体的な計画を作るほうがよいだろう。これは「植林地」のやり方。一方、相川では既にあるものを集め、それらを活かして全体テーマを作っていくほうがよいと感じている。

・その際、内の人も外の人も入り、両方の視点をぶつけ合いながら俯瞰的に見ることが大切。

・概念の図やデザインは最終形はプロが描くデザインだが、議論の過程を共有するためにはグラフィックレコーディングの活用も有効かもしれないと考えている。

・移住者と地域の特徴の類型化に関する共同研究をおこなっている。相性のよい移住に役立てるきっかけを作っていきたい。

・現在は相川で活動しているが、佐渡も、そして新潟も、規模は違うが本質的には同じ形の相似形。相川でできることは規模を広げて展開可能と考えている。


以上、雨宮さんから聞いたお話の要点でした。

地元の人たちのもっている強みや思いを大切にする雨宮さん。

外からの視点で事業を磨き上げる支援をしています。


そして僕が雨宮さんの最大のファシリテーションと感じたこと。

それは、体制の設えにありました。

公益法人や株式会社などの形態をうまく組み合わせています。

地元だけではもしかしたら難しかった種類や規模の法人化。

長い経験に裏打ちされた実施体制の設えにより、相川の人たちの思いが一層はっきり形になっていくのだと思います。


ところで、雨宮さんには相川の京町通りの街歩きのご案内もしていただきました。

相川車座が手掛ける拠点に加え、街の魅力をたくさん教えていただきました。


その一つに、この地に移住した人が営む古民家の映画館「ガシマシネマ」があります。

同じ建物のなかにあるカフェでお昼を食べました。

この素敵な映画館とカフェは僕の心を鷲掴みにしました。

隅々までこだわって設えられた空間。

ここから生まれる交流も地域づくりにつながっていくことでしょう。


相川の地域活動が面としてつながっていくのが楽しみです。

外から訪れる人にとっても、2.5時間どころか、2.5日間いても飽きないことでしょう。

個人的には、スケジュールが許すなら2.5週間くらいじっくり滞在したいと感じました。

地域づくりファシリテーション研究所

地域づくりの活動それぞれにリーダーが必要。でも、リーダーだけいればうまくいくとは限らない。側面支援も大切。この側面支援を「地域づくりファシリテーション」と称して、その役割を考えていきたい。研究所と名乗っているが、とりあえず仲間たちと共にこじんまりと議論し、実践していくなかでの気付きを記録していく。

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