第51話 概念化というファシリテーション その1
自分がなんとなく感じていたこと。
それをビシッと説明してもらってスッキリしたことはありませんか?
「なるほど! そうことだったのか! 確かに!」
そんなふうに腑に落ちるのも大切な学びの過程ですね。
それをもたらすのが、納得感のある概念化です。
学びの過程を支援するファシリテーションといえるでしょう。
地域づくりファシリテーションについて、腑に落ちまくりたい!
常日頃からそう望んでいる僕が、最近、気になる本を見つけました。
『ソーシャル・ファシリテーション』という題名です。
見るからに地域づくりファシリテーションと関連が深そうと感じました。
読んでみると、長く深い経験を持つ2名の著者による丁寧な解説。
現場での経験的な知識を見事に概念化しています。
まず、僕らが取り組んでいる「地域づくりファシリテーション」と比べると、
ソーシャル・ファシリテーションはもう少し広い概念のようです。
地域(Local community)を含みつつも、それに限りません。
「私的(private)」でないあらゆることを含むとの説明です。
そして、「話し合いのファシリテーション」を基本の出発点として位置づけます。
そのうえで、それ以外のファシリテーションを数種類の働きかけとして示しています。
ここまでの概念化だけで、既にかなり唸らされます。
この本のすごいところはまだあります。
後半に紹介される現場事例の数々。
その事例紹介のなかで、何がどの種類のファシリテーションなのか?
それがしっかりと紐づけられているのです。
地域づくりファシリテーションの実例の体系的な整理を試みつつ、
その方法論に苦しんできた僕にとって、これは本当にすごい概念化です。
簡単に見えますが、ここまではっきり形にするのは職人芸と感じます。
最後にもう一つ、この本の概念化の例を紹介します。
それは、大文字と小文字の区別による説明です。
いわゆる会議の司会のように話し合いを促すファシリテーション。
それを小文字のfacilitationと著者は表現します。
一方、集団のメンバー間の関係性や協働を促すファシリテーション。
そちらは大文字のFACILITATIONとして表現しています。
地域づくりファシリテーションで、この概念化はとても有用です。
「司会だけじゃなく、プロセスの支援も含むんです! むしろ後者がメイン」
というような説明を毎回のようにするのですが、簡単には伝わりません。
大文字と小文字という区別によって、人々の理解が進みやすくなりそうです。
この本には、話し合いの空間デザインとしての「しつらえ」という説明もあります。
僕も、地域づくりファシリテーションを数種類の「設(しつら)え」として概念化しようとしてきました。
目指す方向が間違っていないと背中を押してもらった気が勝手にしています。
このように、概念化というファシリテーションの形を、この本から学ぶことができました。
僕にはまだ知識も経験も足りません。
でも、こうした貢献を少しでもできるように、これから意識していきたいと思います。
引用文献:
徳田太郎・鈴木まり子、『ソーシャル・ファシリテーション 「ともに社会をつくる関係」を育む技法』、2021年、北樹出版.
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